試作したサトー電気7kコイルと FCZコイルの特性
今回試作してみたサトー電気の7kボビン・コアを使用したコイルと FCZコイルの特性を測定してみました。
1次2次の巻き数比は FCZコイルにならって 1:3 としています。また、1次コイルのセンタータップも
FCZコイルと同様に巻数の 1/2 の位置にしています。
なお、表中の可変範囲はコアがシールドケースから飛び出さない範囲での可変幅を示しています。
(3.5MHzより下の周波数帯は、ボビンに線材を巻ききれないので試作していません。また144MHz
は手持ちのオシロスコープが100メガ上限なので特性の測定が出来ないため試作していません。)
サトー電気7kボビン・コア(緑)の特性
周波数 | コイル巻き回数 | 同調容量 | インダクタンス 最大値 |
可変範囲 | 無負荷Q | 結合係数 k | 備 考 | |
1次 | 2次 | |||||||
3.5MHz | 32回 ( 8回 X 4溝 ) センタータップ 16回目 |
8回 | 180pF | 12.9uH | 3.3 - 3.6 MHz | 25 at 3.5MHz |
0.66 | |
7MHz | 18回 ( 6回 X 3溝 ) センタータップ 9回目 |
6回 | 150pF | 4.31uH | 6.3 - 7.2 MHz | 40 at 7.0MHz |
0.67 | |
9MHz | 18回 ( 6回 X 3溝 ) センタータップ 9回目 |
6回 | 82pF | 4.31uH | 8.5 - 9.4 MHz | 43 at 9.1MHz |
0.67 | |
14MHz | 12回 ( 6回 X 2溝 ) センタータップ 6回目 |
4回 | 68pF | 2.05uH | 13.5 - 14.4 MHz | 59 at 14.0MHz |
0.69 | |
21MHz | 10回 ( 5回 X 2溝 ) センタータップ 5回目 |
3回 | 47pF | 1.48uH | 19.1 - 22.0 MHz | 59 at 21.1MHz |
0.64 | |
50MHz | 6回 ( 6回 X 1溝 ) センタータップ 3回目 |
2回 | 18pF | 0.62uH | 47.7 - 51.9 MHz | 63 at 50.0MHz |
0.60 | |
80MHz | 6回 ( 6回 X 1溝 ) センタータップ 3回目 |
2回 | 10pF | 0.47uH | 73.4 - 81.0 MHz | 51 at 79.7MHz |
0.45 | かぶせるコアは使用しない |
サトー電気7kボビン・コア(黒)の特性
周波数 | コイル巻き回数 | 同調容量 | インダクタンス 最大値 |
可変範囲 | 無負荷Q | 結合係数 k | 備 考 | |
1次 | 2次 | |||||||
3.5MHz | 32回 ( 8回 X 4溝 ) センタータップ 16回目 |
8回 | 220pF | 11.6uH | 3.2 - 3.7 MHz | 25 at 3.5MHz |
0.66 | |
7MHz | 18回 ( 6回 X 3溝 ) センタータップ 9回目 |
6回 | 150pF | 4.03uH | 6.5 - 7.7 MHz | 40 at 7.0MHz |
0.67 | |
9MHz | 18回 ( 6回 X 3溝 ) センタータップ 9回目 |
6回 | 82pF | 4.03uH | 8.7 - 10.0 MHz | 48 at 9.0MHz |
0.68 | |
14MHz | 12回 ( 6回 X 2溝 ) センタータップ 6回目 |
4回 | 68pF | 2.00uH | 13.6 - 16.7 MHz | 57 at 14.0MHz |
0.69 | |
21MHz | 10回 ( 5回 X 2溝 ) センタータップ 5回目 |
3回 | 47pF | 1.39uH | 19.7 - 23.3 MHz | 59 at 21.1MHz |
0.66 | |
50MHz | 6回 ( 6回 X 1溝 ) センタータップ 3回目 |
2回 | 18pF | 0.62uH | 47.9 - 59.5 MHz | 36 at 50.0MHz |
0.38 | |
80MHz | 6回 ( 6回 X 1溝 ) センタータップ 3回目 |
2回 | 10pF | 0.44uH | 75.9 - 88.2 MHz | 36 at 80.2MHz |
0.48 | かぶせるコアは使用しない |
FCZコイル7k の特性
周波数 | コイル巻き回数 | 同調容量 | インダクタンス 最大値 |
可変範囲 | 無負荷Q | 結合係数 k | 備 考 | |
1次 | 2次 | |||||||
3.5MHz | 26回 センタータップ 13回目 |
7回 | 180pF | 12.92uH | 3.3 - 4.0 MHz | 83 at 3.5MHz |
0.97 | 鼓型コア |
7MHz | 18回 センタータップ 9回目 |
5回 | 100pF | 6.59uH | 6.2 - 7.8 MHz | 68 at 7.0MHz |
0.85 | 鼓型コア |
9MHz | 14回 センタータップ 7回目 |
4回 | 82pF | 3.73uH | 9.1 - 11.7 MHz | 70 at 9.0MHz |
0.83 | 鼓型コア |
14MHz | 12回 センタータップ 6回目 |
4回 | 68pF | 2.35uH | 12.6 - 21.6 MHz | 70 at 14.0MHz |
0.64 | |
25MHz | 10回 センタータップ 5回目 |
3回 | 47pF | 1.65uH | 18.1 - 30.2 MHz | 70 at 21.1MHz |
0.61 | |
50MHz | 6回 センタータップ 3回目 |
2回 | 15pF | 0.83uH | 45.2 - 67.7 MHz | 73 at 50.1MHz |
0.61 | |
80MHz | 6回 センタータップ 3回目 |
2回 | 10pF | 0.53uH | 68.7 - 98.6 MHz | 60 at 83.1MHz |
0.44 |
考 察
サトー電気のコア(黒)は高い周波数で損失が増え、Q が低下するようです。30メガ以上の周波数で使用する場合、ミドリのコアのほうが良いと思われます。
またサトー電気のコア( 緑および黒 )は低い周波数でFCZコイルよりもQ が低下しています。
これは、FCZコイルが9メガ以下の周波数帯では透磁率の高い(比透磁率 約
5 ) 鼓型のコアが使用されており、巻き線長がサトー電気のコアより短くて済むため、FCZコイルのほうが巻き線の損失が少ないためと考えられます。(鼓型コアは直径が非常に小さいので同じ巻き数で比較しても巻き線長は短くなります)
しかし、透磁率が高いため結合係数 k も高くなっており(3.5メガのコイルでは
k = 0.97 もあります)、負荷の影響を受けやすいようです。2次側に接続される負荷のインピーダンスが低い場合、負荷Qが低下して同調がブロードになりやすいと思われます。