Update
: Sep. 18, 2011
簡易型電子負荷装置の製作
簡易型の電子負荷装置を製作しました。
電子負荷は電源回路の評価などに使用する程度で、それほど使用頻度が高い機器とは言えませんが、あれば便利なものなので以前から一度作ってみたいと思っていました。
本機は、簡易型なので定電流負荷ではなく、バリアブル抵抗器として動作します。また、抵抗器として動作している FET の温度が発熱により変化すると、吸い込み電流も変わってしまうので、本格的な負荷装置と比べるとかなり見劣りしますが、なんといっても無電源で使用できる点が1番のメリットです。(回路もシンプルです。)
回路図を示します。
回路は、FET のゲート電圧をボリュームで可変して吸い込み電流を調整する、ごく簡単なものです。
FET は秋月電子で売っている Pch MOS の 2SJ334 (60V 30A 45W ) を4つパラで使用しました。
Nch の FET でも使用可能かも知れませんが、ゲート電圧の変化に対するドレイン電流の変化が
Pch の方が若干ブロードのようなので(従って吸い込み電流を調整しやすい)Pch
MOS を採用しました。
Pch MOS FET 2SJ334 TO-220パッケージで絶縁不要、Pd 45W
10W 0.1Ω の抵抗も同じく秋月電子で売っているメタルクラッドのセメント抵抗を使用しました。この抵抗の電位差で電流計を振らせ、吸い込み電流を計測します。
秋月のメタルクラッド型セメント抵抗 ネジ穴が小さいのでドリルで穴径を広げた
5W 0.15Ω もセメント抵抗ですが、こちらは消費電力が小さいので放熱板に取り付ける必要はありません。
この抵抗の両端の電圧を測定して4つある FET に均等に電流が流れるように FET
のゲートの半固定抵抗を調整します。
この調整を行わないと FET のバラツキにより、4つある FET の内のどれかに電流が集中して発熱し、発熱することによってさらにその
FET だけが電流が増えるという悪循環におちいり、FETが破壊します。(熱暴走)
また、使用したセメント抵抗の抵抗値は必ずしもこのとおりの値である必要はありません。流す電流と抵抗値から電力を求めて抵抗の許容電力のおよそ
1/2 以下となる抵抗値であればOKです。
本機は最大10A 150W 程度まで動作可能です。
150W という電力は相当デカイので、FET とメタルクラッドセメント抵抗は出来るだけ大きな放熱板に取り付けますが、それでも本機の連続動作時間は1分~2分程度としておいた方が良いでしょう。
使用している放熱板はずっしり重い大型の物ですが、それでも150W で2分程度動作させると放熱板が相当熱くなってきます。
もし連続動作が必要ならば、ファンで強制空冷が必要です。
それから、内部の配線も 10A という電流が流れるので出来るだけ太い線材を使用します。
ACコードなどに使用されている 1.25 m㎡ 以上の太さの線材が必要です。
私は、2 m㎡ の線材で配線しました。
調整法
・はじめに吸い込み電流調整ボリュームを電流最小の方向 ( ゲート⇔ソース間の抵抗値が最小になる方向)
に回しておきます。
・各 FET のゲートに接続されている半固定抵抗を抵抗値が最小になる方向に回しておきます。
・10A以上出力できる定電圧電源に本機と10A まで計れる電流計をシリーズに接続します。定電圧電源の電圧は5Vとします。
・本機のスイッチを ON して序々に電流調整ボリュームを上げて 吸い込み電流を
1A とします。
・このとき、回路図の TP+ を基準にして、 TP1~TP4 の電圧を測定し、各電圧が等しくなるようにゲートの半固定抵抗を調整します。
・吸い込み電流を 2A 、3A 、4A と序々に上げながら、TP1~TP4 の電圧が等しくなるように調整します。
・10A まで調整し終わったら、最後に定電圧電源の電圧を 序々に 15V まで上げて最終確認します。
・10A吸い込んだときに内蔵の100uAの電流計の指示が 100 を示すように電流計にシリーズに繋がっている半固定抵抗
10kΩ を調整します。
この調整によって例えば指針が 10 を指すなら 1A ということになります。必要なら電流計の目盛りを書換えると良いでしょう。
・調整完了
注意 !
本機のような大電力を扱う回路では過電流( 過電力 ) によって FET のモールド樹脂が破裂して吹き飛ぶことがありますので、調整や回路検討にあたっては保護メガネを使用されることをお奨めします。
使用感
本機は、3V以上の電圧であれば吸い込み可能です。( 乾電池の 1.5V は無理でした。)
吸い込み電流の調整は比較的ブロードで調整はやり易いです。
FET の温度上昇による電流変化も思ったほど大きくありませんので、あまり電流を微調整する必要はありません。
吸い込み電流が小さい場合( FET の温度が上がらない範囲の電流。 およそ数百mA以下
) なら 1mA 単位で吸い込み電流の調整が可能です。
そういった使い勝手の良い面もある一方、本機は電源に接続する前に必ず、吸い込み電流調整ボリュームを最小の方向に回しておく必要があるところがチョッと煩わしいです。
(これを怠ると FET を破壊する可能性がある)
本機を試しに7年前に購入したシール鉛バッテリ( 7.2Ah ) に繋いで 1C ( 7.2A
) の電流を流してみましたが、端子電圧は 11.7 V あり、まだまだ充分使用できることがわかりました。
このバッテリは毎日、数時間トリクル充電していたので、あまり劣化は進んでいないようです。