Update: Mar. 11, 2013

ハンダごて温度コントローラの製作


 


10年以上使ってきたハンダごての先がずいぶん痛んできたので、久しぶりにハンダごてを新調しました。
今まで使ってきたものは、「HAKKO (白光株式会社)」のN454P (HAKKO DASH 25W)ですが、とても使い易く、コテ先の寿命も長いので、このたびも同じ半田コテを買い求めました。
ところが、同じ25ワットの半田コテなのに、どうもハンダ温度が高すぎるようでフラックスがすぐに蒸発してしまい、今までのように上手くハンダ付けができません。

試しにコテ先の温度を測ってみたところ、新調した半田コテは、約370℃もあります。
古い方の半田コテは、コテ先温度は、約270℃ でした。新旧の半田コテで温度差が約100℃もあることになります。
最近は、鉛フリーのハンダが普及してきているので、鉛フリー用にコテ先温度を上げているのかもしれません。( 半田コテの取説には鉛フリー非対応となっていますが。。。)

 上が新調した半田コテ(HAKKO DASH N454P 100V 25W)、 下が10年以上前に購入した同じ型番の物。


そこで、SSR (Solid State Relay)を使って電力を制御し、半田コテの温度をコントロール出来る温度コントローラを製作してみましたので紹介します。
なお、本機は半田コテ等のヒーターの電力制御用です。白熱電球に使用すると0.33秒で点滅を繰り返します。これはこれで面白いのですが、照明としては使えません。




回路図






回路説明

電力制御には、秋月電子で売っているSSRキットを使用しました。

 秋月のSSRキットを使用



SSR(Solid State Relay)とは、トライアックを使用した半導体リレーで、高速で動作し、メカニカルな接点が無いので長寿命です。
また秋月のSSRキットは、制御部にゼロクロスタイプのフォトトライアックを使っているので、出力波形は必ずゼロクロスのタイミングでON/OFFされ、従ってスイッチングノイズの発生がありません。
ただし、ゼロクロスということは、位相途中でのON/OFFが出来ないということでもありますので、電力を制御する為には、位相制御ではなく、サイクル数を間引くというやり方にする必要があります。

本機では、約0.33秒毎(60ヘルツの場合、約20サイクル毎)にサイクル数を間引いて平均の電力を制御しています。(50ヘルツの場合は約16サイクル毎)

下記にサイクルを間引いて電力を制御したときの波形を示します。
図のように必ずゼロクロスのタイミングでサイクルが間引かれます。





ゼロクロス制御なので半サイクル毎にON/OFF制御できますから、本機の電力制御分解能は2.5%(60ヘルツ時)ということになります。(1/ (20サイクルX2) = 0.025)
電力制御範囲は、約20%~100%です。
電力に応じて10セグメントのLEDが順番に点灯します。電力制御約50%のときには、5番目のLEDまで点灯します。
LEDは右から2個は赤、真ん中3個は黄、左から5個は緑で発光します。緑のLEDは発光効率が悪いので赤や黄よりも電流制限抵抗を小さくして明るさを合わせてあります。

 100%
 50%
 20%

PICのRC0ピンからは周期約0.33秒のPWM波が出力され、SSRのフォトトライアックをON/OFFします。

フォトトライアックのゼロクロスで行われるON/OFFのタイミングはフォトトライアック自身で生成されますので、PICマイコンから出力するPWM波は、
特にAC100Vの位相に同期させているわけではなく、任意のタイミングで出力しています。

PWMのデューティーは、RA0ピンのボリュームからのDC電圧をA/D変換して可変されます。

PICの電源は、秋月電子で売っている5V 1A出力のACアダプタから供給しています。
PIC起動時の3秒間は、全てのLEDが点灯し、この間はSSRはOFFしています。
起動3秒後から電力制御を開始します。

SSRは回路にシリーズに入りますので、AC100Vラインにヒューズは特に入れていません。(ACアダプタ内部にはヒューズが入っています。)
でも半田コテがショート故障した場合などのために心配なら1Aくらいのヒューズを入れて下さい。



内部写真



100ワット程度の電力制御ならトライアックに放熱板は不要です。
安全上、電源1次側(AC100Vライン)と2次側(PIC回路側)は近接しないように充分、空間距離を確保して配線します。
また、SSRの基板はプラスチック製の絶縁タイプのスタッドでシャーシに取り付けた方が良いと思います。
シャーシも絶縁のために金属製のものは避け、プラスチック製のケースに組み込みました。



温度コントロールの結果

温度コントロールの結果を示します。
およそ電力50%でコテ先温度が270℃となりました。

室温19℃、AC電圧 100.3V時

コテ先温度
電力20% 220℃
電力50% 270℃
電力100% 370℃

 電力50%で制御中



PICのソフトウェア

PICのソフトウェアはこちらからダウンロードできます。

使用感

コテ先の温度が適温になったため、ユニバーサル基板のランドを剥がすことがなくなり、綺麗に半田付けができるようになりました。