インピーダンス変換率の測定
2次コイル側から1次コイル側へのインピーダンス変換率は、完全に結合係数1の場合は巻線の巻数比の二乗に比例しますが、結合係数が1でない場合はこの原理に従いません。
そこで、測定してみることにしました。
測定方法は、Q を測定する方法と同じです。
2次側に抵抗Rl を接続し、そのときの直列共振回路のRs を測定し、そのRs を並列共振回路のコンダクタンスG に変換します。G は双対の理により
G = Rs / X^2
で求まります。
さらに G はコンダクタンス (抵抗の逆数) ですので、並列共振回路に入る並列抵抗
Rp の形であらわすと
Rp = 1 / G = X^2 / Rs
従ってインピーダンス変換率は
インピーダンス変換率 = Rp / Rl
となります。
測定結果
FCZコイルとサトー電気のコイルの測定結果を示します。
考 察
FCZコイルもサトー電気のコイルも共に2次側負荷が50Ω以上あれば、そのインピーダンス変換率はおよそ巻数比の二乗に比例していると考えてもそんなに違いは無いようですが、数10Ω以下となるとインピーダンス変換率が急に大きくなります。(
FCZ07S3.5を除く)
これは、コイルの結合係数が1より小さいので、
負荷が1次側に影響を及ぼしに難くなっている→負荷によるQの低下が少ない→Rp
がより大きくなっている
と考えることも出来ます。
ただ、この現象は1次側から2次側へのエネルギー伝達に係わる磁束が、もはや飽和していることを意味し、1次⇔2次間の電力伝達効率が悪くなっているものと思われます。
また、FCZ3.5メガコイル ( FCZ07S3.5 )は結合係数が1に近いので、負荷の影響を受け、Qが低下して50Ω以下では測定不能となり、インピーダンス変換率を求めることができませんでした。
一般にエミッタ接地増幅回路において、トランジスタのベースを見たインピーダンスrb
は、シリコントランジスタの場合、エミッタ電流を Ie [ mA ]、 トランジスタの電流増幅率を
hfe とするとおよそ
rb = ( 26 / Ie ) ・hfe [ Ω ]
となります。
下図のようなエミッタ接地増幅回路をコイルの2次側(負荷側)に接続する場合、コイルの2次側に接続されるインピーダンスを求めると
B点からベースを見たインピーダンスは上式より
rb = ( 26 / 12 ) ・100 = 217 [Ω]
従って、コイルの2次側に接続されるインピーダンスRin (A点からベースを見たインピーダンス)は
Rin = 2.7k // 680 // 217 = 155 [Ω]
となります。
コイルの2次側に増幅回路を接続すると、このような負荷インピーダンスが接続されたことになり、それに応じて同調回路のQが低下します。
例えば、7MHz の FCZコイル は、Qu (無負荷Q) は 68 ですが、同調容量 100pF
で 7MHz に同調させた場合、下図のようなエミッタ接地増幅器を接続すると 増幅器の入力インピーダンス
155 [ Ω ] が 2次→1次間で約9倍に変換されて(巻数比の約二乗)、1次コイルには
155 X 9 = 1395 [ Ω ] が並列に接続されたことと等価です。
このとき、共振時のリアクタンスX
X = 1/( 2πf C ) = 227 [ Ω ] なので
従ってQl (負荷Q )は
Ql = R / X = 1395 / 227 = 6
このように無負荷Qが高いコイルでも実際に回路に入れて使用した場合の負荷Qは相当低い値となってしまいます。