簡易スペアナtinySA

UPDATE : Sep. 19th 2021
このところ、世間をにぎわせている廉価なスペクトルアナライザー tinySA を購入してみました。
本機は、信号発生器としても使用できるので、どの程度の性能なのか評価結果を報告します。

tinySA は昨年(2020年)夏頃から話題に上ってきた小型で廉価な簡易スペクトルアナライザーです。
tinySA はオランダの Erik Kaashoek 氏により設計され、中国の Hugen79 で製造されているとのことです。
近頃は、コピー製品(偽物)も出回っており、うまく動作しないものがあるようなので、私は、tinySA の Webサイト で正規受託販売店に指定されている日本の "スイッチサイエンス"から購入しました。
購入する数週間前には \8,800 で出ていたのですが、私が購入するタイミングで \10,800 に値上がりしていました。
(あの時、買っておけばよかった~~残念)
製品は、2日で手元に届きました。 写真で見ている限り、かなり小型だなぁ、とは思っていましたが、実際に製品を手に取ってみるとホントに小さくて まさに手のひらサイズです。

















  手のひらサイズの tinySA

液晶画面をタッチするとメニューが表示されるのですが、文字が小さくて指先ではなかなかタッチがやり難いです。
私は、画面をキズつけないように綿棒でつついてタッチしています。
本機は、液晶画面が抵抗膜方式(感圧式)なので綿棒のような絶縁物でタッチしても反応します。


















  綿棒でタッチ
小さな液晶画面上にスペクトルが表示されます。
画面は小さいですが、パソコンなどに接続しなくても使用できるので便利です。


















  画面表示
電源は、内蔵のリチウムポリマー2次電池です。tinySA の Web ページの記載によると2時間程度使用できるそうです。
充電は、USB 充電です。充電中は、USB コネクタ付近の赤い LED が点灯し、充電が完了すると消灯します。


性能評価

本機の性能評価ですが、本命のスペアナ機能については書籍(RFワールドNo.54, No.55 CQ出版社) やいろんな Web サイトで既に発表されているので、ここでは主に信号発生器として評価を記載します。
信号発生器の出力は2系とあり、1つは Low output mode、あと1つは High output mode です。
High output mode は 240MHz ~ 960MHz ですが、矩形波出力なので良い悪しの判断が難しく、評価は行いませんでした。

Low output mode は 100kHz ~ 350MHz の "Sinus wave" となっています。
"Sinus wave" つまり、湾曲した波形ということでサイン波とは言っていません。
そこで出力波形を観測してみました。 評価は、Signal Hound社の SDR スペアナ USB-SA44B を使用しました。

先ず、10MHz -10dBm 出力時の波形とスペクトルです。(スペアナ USB-SA44B の入力には 20dB のアッテネータが挿入してあります)
オシロで見る限り、きれいなサイン波になっています。
スペクトルは3倍の高調波が -45dBc 程度出ています。


tinySA 10MHz -10dBm 出力


次に 50MHz -10dBm 出力時の波形とスペクトルです。
オシロの波形としてきれいですが、3倍の高調波が -38dBc です。


tinySA 50MHz -10dBm 出力


100MHz -10dBm 出力時の波形とスペクトルです。
オシロの波形はきれいですが、3倍の高調波が -36dBc となっています。


tinySA 100MHz -10dBm 出力


以上のように"Sinus wave"といっても、そこそこ使えそうな感じです。

周波数対出力レベルのグラフを示します。 200MHz まではほぼフラットな特性です。 350MHz では約 2dB 出力が低下します。



出力レベルの可変範囲は、-7dBm ~ -76dBm で、1dB 単位での設定が可能です。
1dB 以下の設定は、四捨五入されます。

出力レベルは、200MHz までは表示の数値より約 2dB ほど高く出力されるようなので -10dBm 出力するときは、設定を「-12dBm」にします。
(これには個体差があるかも知れませんので他の tinySA では個別に確認が必要かも)

それと、いろいろ使っているうちに気付いたのですが、出力レベルの可変に不連続なポイントがあるようです。
-7dBm から -35dBm までは -1dB づつ可変していってくれるのですが、tinySA の設定値を -35dBm から -36dBm に変更すると -1dB ではなく、 -7dB レベルが急に下がります。
そして -36dBm より下の範囲はまた 1dB づつ出力を変化させることができます。

従って、表示が -36dBm より下の範囲は、設定値よりも実際の出力が -4dB 小さくなり、-40dBm 出力したい場合は、設定を「-36dBm」にする必要があります。


周波数の設定は、1kHz 単位となるようです。
表示上は、1kHz 以下の設定もできますが、実際の出力には反映されません。

周波数の精度は、すこぶる良好で、誤差は 1ppm 以下のようです。
ただし、これは 10kHz 単位で周波数を設定した場合であり、 1kHz 単位で設定したときは精度は少し悪くなり、10ppm 程度の誤差が出ます。


出力波形には変調が掛けられるようなので試してみました。
下図は、10MHz -10dBm の出力に内部の変調機能で 1kHz の AM 変調を掛けた場合です。

10MHz -10dBm AM変調波形

ん~、AM 変調といえばそうですが、どうもデジタルチックな波形ですね~。
ただ、出力を144.230MHz にして 1kHz の変調波を2メーターSSB機でモニターしたところ、一応変調音はきれいに聞こえましたので、ざっきりとした回路の確認用としては使えそうです。



最後にスペアナとしての精度を少し見てみました。 ( 測定精度の校正は tinySA の自己キャリブレーション機能で校正済です。)
信号源には、中華製の安い SSG を使用しました。
tinySA のスペクトル波形は、tinySA の Webサイトからダウンロードした tinySA-App.exe というコントロールアプリを使用しています。
このアプリはまだ開発中なのか、上手く動かない機能もあるようですが、最低限の動作はします。

中華製 SSG から 10MHz -20dBm の信号を SDR スペアナ USB-SA44B と tinySA にそれぞれ入力して信号のレベルと高調波のレベルを比較しました。

先ず、信号レベルの測定値比較です。
左が USB-SA44B、右が tinySA です。ほぼ同じ信号レベルを表示しています。(tinySA のスペクトルはクリックすると拡大します)

Click to enlarge
10MHz -20dBm 入力時の測定レベル比較    (Left:USB-SA44B    Right:tinySA)

次に同じ10MHz -20dBm の信号の9次高調波を測定値し、比較してみました。
左が USB-SA44B、右が tinySA です。(USB-SA44B は⊿マーカー表示、tinySA は絶対値表示)
9次高調波は USB-SA44B が 10MHz に対して -58.6dBc 、tinySA は -56dBc で少し違いますがほぼ同じ測定値とみて良いと思います。

Click to enlarge
9次高調波 (90MHz) の測定レベル比較    (Left:USB-SA44B    Right:tinySA)

次は中華製 SSG から 30MHz -20dBm を入力した場合です。
この中華製 SSG は 30MHz を出力しているときに 250MHz 付近でスプリアスを出すようなので、このスプリアスの測定値を比較してみました。
左が USB-SA44B、右が tinySA です。(USB-SA44B は⊿マーカー表示、tinySA は絶対値表示)
USB-SA44B が 30MHz に対して -56.6dBc 、tinySA は -56.3dBc で、同じ測定値となりました。

Click to enlarge
SSG 30MHz 出力時に 250MHz 付近に出ているスプリアスの測定レベル比較    (Left:USB-SA44B    Right:tinySA)

このように tinySA はわずか \10,000 程度で購入できるにも関わらず、その精度は優秀です。
スペアナとしての最大許容入力が +5dBm と比較的高いので大振幅の信号の測定にも使えます。
小型でパソコン不要、スタンドアロンで使えるので実験机の横にチョコンと置いて、アンプや逓倍器の設計に、また評価時の信号源として使っていきたいと思っています。